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シンシウエニシ徒然草々


Diary-2007/08/14
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兼六園


盆休み、友達が遊びに来た。
一人は開発関係で、もう一人は品質検査関係の仕事をしている。

「検査の奴らはダメだしするだけでいい。
一々偉そうに怒りやがって。
俺らがやり直すんだ。
大体いっぱつで完全なもんなんか出来るはずがないだろう。
こっちは、むちゃな期限の仕事を抱えてるんだ。」

「設計部、部品検査、製品部、三つもあって欠陥が素通りしてくるとは何事だ。
途中で気付けよ。
ちゃんと図面見てんのか。
お前らだけがサービス残業してると思うなよ。」

二人は同じ会社ではないが、部署ごとの確執を互いにぶつけ合っていた。
開発部長、検査部長と呼び合っていたが、二人とも平だ。
出世は当分先だろう。

他にも、業務改善の提案をするように言われるが、ただでさえ多すぎる仕事をサービス残業で何とかしているのに、提案したらそのままそれが自分の仕事に割り当てられるから、誰も提案なんかしないといった愚痴があった。
不満を垂れながらも彼等は日夜働いている。

彼等は日本経済を支える縁の下の半強制労働者層だ。
しかし、もっと馬車馬のように働いて株主配当を稼がなくてはならない。
毎日16時間労働がどうした。
サービス残業が何だ。
60年前は、お国のために、天皇陛下のために24時間戦場で戦うことが当たり前だったのだ。
戦場で、餓死し、病死し、事故死し、いじめ殺され、鉄砲玉にされた。
文字通り粉骨砕身の働きであり、そしてその全てが名誉の戦死であった。
そのことを思えば、昨今の労働など何ほどのことがあろうか。

私は、社会保険庁か雇用能力開発機構に勤めたい。

遊びに来た一人が兼六園に行きたいとリクエストした。
私は、唯のだだっ広い松林だから面白くないし、夏は暑すぎると説明したが、彼は頑なに行きたがった。
金沢といえば、兼六園ははずせないらしい。

結局、三人で兼六園に行ったが、言い出しっぺが一番つまらなそうにしていた。
だから、面白くないと言っただろうと話し掛けると、充分に楽しんでいるし、この顔が私の楽しい時の真の表情だと言い張った。
隙あらば、彼の表情を覗き込んだが、その度に彼は慌てて笑顔を取り繕った。
その笑顔は、楽しい時の真の表情ではなかったが、心優しい私は何も言わなかった。

私達の友情は深い。

二人にまん丸教に入信するように誘った。
開発部長は快諾してくれたが、検査部長は拒否した。
検査部長は宗教が嫌いだからだ。
奇遇なことに、まん丸教祖も宗教が嫌いだ。
いつかきっと、私達は分かり合える。


ではまた ごきげんよう。


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